連載「日本体感温度
〜青年海外協力隊活動を終えて〜」
松山市公立小学校教諭 藤井田 美代

第2回「節約、物を大切に観…」
〜実は世界標準装備ではなかった〜

「もしも百万円がいきなり手に入ったら、あなたはどうしまか?」こう聞かれたら、どう答えるだろう。
 あれこれと使い道を挙げてみた後、結局「貯金」する人が世界一多いのが日本であり、日本人の貯金好きは有名である。今や全世界の貯蓄金の6割を日本人の貯金が占め、外貨準備高も日本は世界最大。世界の多くの国が対外債務国である中、日本はアメリカ国債の最大保有国。他国からは外交手段を通して、他国資本家からはあの手この手で狙われるなどという貯金がある希有な国。世界に200もの国がある中、こんな国は日本以外にあるだろうか。
 この類い希な国民性を私が実感できたのは、衣食住を現地の人とともにおくる協力隊生活の中での次のような出来事からである。

ケース1:
 生活に欠かせないものの一つ水、その水が底をついた。蛇口は設置されているものの、そこから水が出ることはほとんどない上に、そのタイミングも不定期である。長らくの好天に恵まれ、川から水を汲もうにも干上がっていてそれは不可能。また猛暑のため、毎日滝のように汗をかくので体はべっとり。そんな中、奇跡的にいきなり蛇口から水が出た。さあどうするか?
ケース2:
 村のある小学校で。学用品不足のため、子ども達は何も持たずに授業を受けている。そんな中、日本の子ども達からの好意で、ノートや鉛筆が届いた。嬉しそうにそれを受け取っている子ども達を見ながら、渡す自分も幸せな気持ちになっている。さあ、明日から子ども達は、その思いがけない贈り物をどうするか?
 実際はどうであったか。

ケース1:
 嬉しさのあまり、私は水を眺めてジーンと涙。そして次回いつ手にはいるか分からないので、大切に大切にして、洗面器一杯で髪も体も洗うという節約をした。しかし翌朝、私は水瓶(同居の家族と共有)を見てビックリ。何と水はほとんとなくなっていたのである。以後、そんなことが度々ある中で、これは水に限らず、日本人とは「節約」観念が著しく違うことに気づいた。
ケース2:
 大切そうに手にしていたのはつかの間で、子ども達はその後、ノートを破る落書きをする鉛筆を投げるの連続、教師も指導しない。子どもは遊び方発見のプロであるということを、実感させてもらう貴重な体験になった。授業改善などという本来の期待は消え、私は日本人の「物を大切に」感覚の存在を実感したのである。

 日本人の貯金好きは、政治不安の表出などという他力的単純な言葉で片付けれるものではない。今を犠牲にして将来に備えることの尊さ、その忍耐や自律の困難さを知っているがゆえにそれを善ととらえる倫理観。それをなくしては、今の日本はなかっただろう。それは世界に誇れる日本人の心のうちの一つであると確信する。

(責任編集・白石哲朗)
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参考ホンジュラス日記

H16.10.25