今月の主張
 中山会長の巻頭言
「みかん一座からの成功を学ぼう」 
日本会議愛媛県本部会長
 中 山 紘 治 郎
 先日、みかん一座ミュージカル「オーロラに駆けるサムライ〜和田重次郎物語」のラストステージを観劇した。大成功だったアラスカ公演への感謝をこめた、ふるさと愛媛のみなさんへの「ありがとう公演」ということだったが、二日間、市民会館は立ち見がでるほどの熱気に包まれていた。上演されたのは、「犬(いぬ)橇(ぞり)使いの神様」とも称された和田重次郎の偉業と波乱の生涯である。歌、ダンス、科白(せりふ)、コミカルな演出等、市民手作りのミュージカルとはとても思えない感動の舞台だった。戒田節子座長、特別出演の加戸守行ご夫妻、そしてスタッフとキャストの皆さんに心から賛辞を贈りたい。

 終演後、心地よい興奮のなか、私は幸田露伴の『努力論』の一節を思い起こしていた。「心は気を牽(ひ)き、気は血を牽き、血は身を牽きいる」。心が脚(あし)を強くしたいと思うと、脚に気が入り、気を入れて歩くと、そこに血が流れ、血は身体と筋肉をつくるという鍛練論である。

 貧困から母を救い出すため、「アシはアメリカに渡って住友になるぞ」と誓ってふるさとを発ち、アラスカ開拓に人生を賭けた重次郎の強い孝養の心は、不屈の勇気と覇気を生み、その気概が人種や民族をこえた友情、信頼、交流をつくり出し、新たな時代を拓(ひら)く。重次郎から学ぶべきことは多い。が、それはそれとして、みかん一座の大活躍は、いま憲法改正の国民運動を展開している私たちへ大切な示唆がある。鍛練論で例えれば、みかん一座には血の通う交流が市民との間にあるということだ。思い起こせば、古代ギリシアに起源をもつ演劇は、民主主義と同様に市民の中から生まれ発展してきたものである。

 私たちが推進している憲法改正運動は、心も気もたるむところはいささかもない。しかし運動が血液となって市民の暮らしの中にしっかり届いているかどうか。憲法の改正が暮らしの向上に具体的にどのように結びつくものなのか。草の根の運動へといっそうの広がりを期すため、斬新な改革改善を怠らないようにしたい。


『日本の息吹』平成27年7月1日号「愛媛版」より転載

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