今月の主張
 「日本の息吹愛媛版 平成26年6月号巻頭言」
「セウォル号沈没事故に思う」 
日本会議愛媛県本部会長
 中 山 紘 治 郎
 旅客船セウォル号の沈没事故は誠に痛ましい。犠牲になった乗客の大半は将来のある高校生たちである。若き御霊に哀悼の誠を捧げ、ご遺族に衷心よりお悔やみを申し上げる。

 それにしても、この惨事は韓国国内だけでなく世界中から「民度」の低さを指摘する声があがった。真っ先に救出される船長の映像を目にし、世界の人々はあいた口がふさがらなかったのではないか。船と運命を共にしたタイタニック号のエドワード・スミス船長の雄姿を思い描いた人もたくさんいたはずだ。日本の海難事故でも、船長は矜持を胸に殉職することが多い。洞爺丸や紫雲丸でもそうだ。明治四十三年四月の「第六潜水艇遭難」では、死が迫りくる艇内で佐久間勉艇長は崇高な職業倫理につらぬかれた遺書を残している。全乗員は最期まで配置場所を離れていない。この遭難は、軍人はもとより船乗りの使命と規範を後世に示すこととなった。

 佐久間艇長の職業倫理の基層をなしている精神は、その後日本の「武士道」とあいまって欧米にも伝わり称揚される。これは私たち日本人が合理的な思考や論理に富むだけではなく、伝統文化に育まれた奥深い精神性をもっていること、すなわち「日本のこころ」への敬意と共感でもあった。

 大東亜戦争中の昭和十七年三月、駆逐艦「雷(いかづち)」が演じた敵兵の一大救出劇も、日本人の精神の気高さをいかんなく発揮したヒューマンドキュメントである。「雷」はジャワ海で漂流していたイギリス海軍将兵四百二十二名を救助し、オランダ病院船へ全員無事に引き渡した。この奇跡的な救出を命じた工藤俊作艦長は、海戦で「雷」と多くの部下を失っている。生きて戦後を迎えた工藤元艦長は、この救出劇をだれに語ることもなく他界した。

 韓国は戦後、近代化をなしとげ、世界で七位の輸出国、十三位の経済大国になった。しかし国民精神の根底にあるのは、「李子(りし)朝鮮」の時代からつづく隷属的精神ではないだろうか。一六三六年、中国に清王朝ができたとき、李子朝鮮は「清の属国になる」という屈辱的な講和を結ばされ、美女と宦官の貢納をはじめた。それよりも一千年も前、「日出処天子」の国書を隋に送った聖徳太子の日本と、国柄も国のなりたちもまったく異なることはいうまでもない。

 伝統や文化教養をないがしろにする国づくりは、国民の精神を貧寒なものにし、あたかも私利私欲が国是であるかのようなけばけばしい民度の国民をうむ。殷(いん)鑑(かん)遠(とお)からず。GHQから押し付けられた現行憲法の改正は、日本の伝統文化と日本のこころを後世にしっかり伝えていくことでもある。





『日本の息吹』平成26年6月1日号「愛媛版」より転載

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