観艦式 総理の訓示に「奮励努力」「五省」
日本会議愛媛県本部会長
 重 松 惠 三
 十月十四日、自衛隊創立記念観艦式を見学。現役時代から二十年ぶりに海上自衛隊の威容に接し血の昂ぶりを覚えました。相模湾、濛気海面を蔽うも視界支障なく、自衛艦四五隻、米イージス巡洋艦には第七艦隊司令官が座乗、各艦は野田総理に敬礼を捧げて進みます。

*総理訓示 東郷さんが乗り移ったか それならいいのですが

 観艦式の後、爆雷投下、潜水艦の急浮上など一連の展示が終わり、総理の訓示が始まります。各艦のスピーカーから心なしか高揚した声が響きます。「国防に想定外なし」もっともなことですが、この自らの不明と手抜きと怠慢の証「想定外」を恥じることなく、連発して責任を回避した民主党政権の首相としては、久しぶりに聞く当たり前の言葉でした。第一線に立つ各自衛隊は「想定外」を想定してあらゆる防衛事態に備えています。私の後ろに居た年配の男の声。「この艨艟をもって観艦式を東シナ海でやったらどうだ」。 

 隣国から襲い来る波いよいよ高まる我が国に、日本海海戦に臨む東郷連合艦隊司令長官の精気が乗り移ったか、総理は「各員一層そう奮励努力」することを求め、最後を「五省」で締めくくります。海軍兵学校の生徒が毎日、称唱して修養の標としたものです。

 五省。それは、
一、至誠に悖るなかりしか
一、言行に恥ずるなかりしか
一、気力に欠くるなかりしか
一、努力に憾みなかりしか
一、不精に亘るなかりしか   の五つの徳目です。

 今も、防衛大学校、幹部候補生学校では受け継がれています。よく言われます。兵は国民の水準を示し、将校はその国の知性と道義の高さを表す。「五省」は米海軍兵学校アナポリスでも生徒の修養の資としています。将校・士官が自省し,自戒して自ら高みを求めることに国の違いはありません。私は「奮励努力」も「五省」もそのまま我が国の政治家諸公に贈りたいと思います。リーダーに必要な徳目は、時を経て変わるものではありますまい。

*変わる徳目。日本人も変わるか ボーイスカウトの「掟」
 スカウトの「掟」から消えた「忠節」「従順」「純潔」「慎み深い」「人の力になる」

 ボーイスカウトの「掟」は「三つの誓」とともに名誉にかけて守るべき、また身に修めるべき徳目です。私たちがスカウトであったころは十二項目。「誠実」「忠節」「人の力になる」「友誼」「礼儀」「親切」「従順」「快活」「質素」「勇敢」「純潔」「慎み深い」です。その中から最近は先に挙げた五つの徳目が亡くなり、「感謝」が加わり、八項目になりました。消えた五項目はかつて本欄で述べたパブリックスクールとスカウトの共通する少年期に養うべき大事な徳目です。国によって「掟」は若干の違いはありますが、基本は同じきもの。スカウトの国際性もそこにありました。日本語から、日本人からこれらの言葉が消えたのかも知れません。悲しむべきことです。






『日本の息吹』平成24年12月1日号「愛媛版」より転載

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