高校の歴史教科書に所懐あり
日本会議愛媛県本部会長
 重 松 惠 三
 愛媛県では三高校。日本史教科書として明成社の「最新日本史」が採用されました。土居、弓削、そして三瓶高校。中学校からの歴史教育の一貫性・継続性は上島町弓削高校、四国中央市土居高校においては確保されることになります。関係者の見識の高きことと、判断の正しきことに敬意を捧げます。

 早速土居高校のOBによる投書が愛媛新聞に掲載されました。教科書問題で新しい選択に批判的な人々の常套句。「戦争賛美の教科書」が主論です。昨年、採択された中学校教科書に反対する共産党の今治市議会議員が同じ言葉で質問しましたが、当時の小田教育委員長の「この教科書のどこに戦争賛美と書いているのか」との反論に、黙してそれ以上の議論はありませんでした。「戦争賛美」のラベルを張って情緒的に彼らの意に合わぬものを排除する。教科書の問題だけではありません。各種の反戦平和運動と称するものに彼らがいつも使う手法です。

 ちぐはぐに戸惑う生徒の姿が浮かびます。県立の中学高校一貫校も中学校では、育鵬社の教科書を採択しながら、高校では今までと変わらない、偏向が指摘される教科書です。授業では生徒にどのように説明するのでしょうか。中学校と高等学校では教科書採択の方法仕組みが違うとはいえ、県や今治市においては中学校の歴史・公民教科書の採択に示した教育委員会の考えに高校では同意できないと表明しているようにも思えます。

 一貫性も重要なことです。もっと大事なことは教科書が教育基本法・学習指導要領の示すところをどの程度反映しているかの評価だと思います。国を愛すること、郷土を愛しむ心を養うことはその国に住み、その地域に生活する人にとっては己の何たるかを確立する基であります。私たちは、遠き御祖先らが長い年月をかけて築あげたものを代々受け継いで参りました。この時空を超えて私たちの心を縦につなぐ絆の中で今を生きています。

 教科書の問題についてはいつも頭を過る言葉。それは日本共産党の武闘路線が議論された頃。志賀義雄が反対して言ったと伝えられます。「武装闘争などやらなくても、共産主義者が教科書を作り、その教科書で日教組の先生が子供を教えれば二十年〜三十年たてば日本の革命はできる」。現在各界のリーダーの殆どが日教組の影響下に育ちました。志賀義雄の予言が当たらないことを、日本と日本人のために祈るのみです。 

 わが師・竹本千万吉先生。高校の日本史の先生です。先生の授業は教科書に依ることなく自らの言葉で歴史を説きました。それも高校の教育は学問への導入であるとして、其の深い学殖に基づく、幅広いしかも偏りのない授業でした。若さと日本史への情熱が、生徒を魅了しました。ノートをとって一年間の授業に五冊も使った者もいました。郷土のことも教わりました。今治中学出身の八木春雄氏のことから五・一五や二・二六事件に、更には政治と軍の関わりに及ぶ。今治キリスト教会と徳富蘆花は明治のキリスト者の話に?がり内村鑑三や新渡戸稲造の人となりや思想に広がる。高校生にとっては知的刺激を受ける有難い授業でした。今もこの先生に受けた授業が私自身のものの見方考え方の基礎になってい
るように思われます。

 高校の教科書採択について所懐の一端を述べました。




『日本の息吹』平成24年11月1日号「愛媛版」より転載

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h24.11.10