「国益」に必死にならなきゃ国亡ぶ
日本会議愛媛県本部会長
 重 松 惠 三
 我が国の「国益」とは何か?政治家の先生方の中に、「国益」についての常識的な認識を持っていない人がいる。それも多い。「国益」を深刻に考えて欲しい。政治家の皆さんが共通の価値観を持って「これが国益だ」と言うものへの認識を共有しているのだろうか?疑問なしとしません。アメリカでは一九九八年、国務省がアメリカの「国益」を表明。その中で最も重要なものとして、一、領域保全、二、国民の生命財産の保護、三、経済的利益を上げています。我が国でも異論はありますまい。ここに挙げた「国益」は軍事力を使っても守る。ニューヨークの同時多発テロで国民多数が犠牲になった時、ブッシュ大統領は直ちに「アメリカに対する戦争だ」として、アフガニスタンに派兵しました。重要な「国益」にはこの決意が必要です。

 アメリカとの通商交渉でも、日本は何度も彼らのタフな交渉に苦しみましたが、経済的利益は最重要の「国益」だからです。TTPについても日米で本気度が違えばどうなるのか気になります。アメリカの国際的影響力も又極めて大事な「国益」です。昨年来、アメリカのアジア重視への外交軍事戦略の変換は中国の拡大する国際的な権益、影響力のまえに、相対的に低下するアメリカの国際的影響力をいかにして維持するか、その対応であることが解ります。中国は重大な国益を「核心的利益」とします。この確保に軍事力を使うことを公言し、領土として、チベット、ウイグル、台湾、南シナ海。尖閣もそうだと言います。中国の拡大志向により「核心的利益」もどんどん広がります。いずれ東シナ海、沖縄までもそうだとするのでしょう。

 我が国はどうでしょうか。総理にして「日本は日本人だけのものではない」とか、日本の領域領土を、掠めとろうとする隣の国の艦船が我が国の法を犯して各種行動をしているその海域を「友愛の海」と呼ぶ。防衛が国家にとっていかに重大かを思うことなく、日米安保が果たす防衛への役割に理解もなく、普天間発言によって日米間に亀裂を入れる。拉致問題への取り組みが無きに等しい政治の現実に、国民の命、最も重大な「国益」に対する認識なきことが解ります。

 正月早々北朝鮮の漁師三人、工作員の疑いも濃いと言うのにどんな調べをしたのか、早々に北京経由で帰国。中国の仲介、働きかけがあったと言う話も聞きます。南極海のシーシェパード・テロ、日本人の命が危うい事態。捕鯨船に乗り込んだ犯人をすぐオーストラリアに返す。尖閣の漁船問題への拙劣な政治の対応。東シナ海での艦船の無法な行動、中間線付近での石油・ガス田、宮古水道は今や中国海軍の通路。政治は「国益」の確保にどれだけ真剣に対応しているのか国民には伝わって来ません。竹島も、北方領土もわが固有の領土に不法な実効支配が続く。国家の尊厳、国民の誇りも大事な「国益」です。外国人参政権、人権保護法、夫婦別姓などはこれを損なうこと、明白。

 「国益」の何たるかに無知、それを守ることに命を懸ける覚悟のない者が国政を論じてはなりません。国家観を持ち得ないからです。「国益の砦」・外交・軍事に通暁した見識が国の未来を確かなものにします。今の政治家諸氏ではどうしようもありません。チャーチルやドゴールの様な政治家を日本は求めています。そんな人物が出ないと国が滅びます。


『日本の息吹』平成24年3月1日号「愛媛版」より転載

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