政治家の資質をチャーチルに見る。
今の日本の政治家は?
日本会議愛媛県本部会長
 重 松 惠 三

 就任九日にして自らのバカな発言により辞任する大臣、国家の枢機国防担当大臣は安全保障に無知なるを明かしたうえで「素人がやるのがシビリアンコントロール」と言う。政治家の質の低きことに国民の憂慮は尽きるところがありません。

 二十世紀における最も優れた政治家は誰か?多くの人が躊躇することなく挙げるのはチャーチルでありましょう。第二次大戦、ヒットラーの猛攻を受けながらイギリスを守り抜き、ついに勝利した宰相です。何を以て政治家の優劣をはかるか。第一は国家への忠誠貢献です。それは取りも直さず国民への奉仕です。今、国難。我が国の政治家の実態を思いながら、政治家としてのチャーチルのいくつかの資質について述べます。

一、言語力と信念

 チャーチルの数多い著作の中でも、「第二次世界大戦回想録」はつとに多くの人を魅了し、これによってノーベル文學賞を受けました。政治は言葉です。自分の言葉で自身の信念を伝える。原稿棒読みで人は感動することはありません。チャーチルは「自分の手で書き上げ、すっかり暗唱する草稿以外では演説しなかった」と。人を惹く言葉には格調と重みと深さがあります。その背景に高い教養と信念は欠かせません。強い信念は激しい気迫を生みます。気迫は感動を呼び行動を促すものです。「私が提供できるものはただ血と労苦と涙と汗だけであります。…神が我々に与えるあらゆる力を傾けて断固として戦い抜くことであります。…最後の目的はただ一語「勝利」であります。」ヒットラーの侵攻烈しき中、チャーチル六十六歳の首相就任時の演説です。英国民の不屈の魂はここに生まれました。  

二、国を愛する心  国に身命を賭する情念

「大英帝国は生き延びる。わが島国は長い歴史の中に最後の勝利者として再び立ち現れるであろう」「絶対に屈服してはならない。絶対に、絶対に、絶対に」このチャーチルの大英帝国を守らんとする絶叫。国を愛するが故に犠牲を顧みず戦い、身命を賭して国を守る。熱き情念の源は王室を戴く国柄であり、伝統文化であり、歴史に刻んだ誇りであり,同胞です。民主党政権はオバマ大統領と同様に「チェンジ」看板としました。かつて革命を幻想した「左」が主導する政権は伏流に、革命への願望を残したまま国政を運営しました。転覆破壊する国を愛しえず、国旗・国歌にも反対するのは当然と言えば当然です。

三、広い視野、洞察力 勇気 決断

 ヒットラーを見る目は、風潮に揺らぐことなく、譲歩と妥協に一時の平和を求めるチェンバレンがナチのチェコ併合を認めた時「我々は一戦も交えず、明らかに全面的敗北をした」と厳しく批判しました。この慧眼・洞察力をもってすれば第二次大戦は抑止できた。今も悔やまれます。政治と外交に示した勇気と決断、は称賛すべきものがあります。

四、チャーチルの資質はいかに培われたか  辿りし道 軍隊

 一八七四年生に生まれ、一四歳でハロウ校。ナポレオンを破ったウェリントンが「勝利はイートンがもたらした」と言ったようにパブリックスクールは軍人を育てます。一九歳で陸軍士官学校、卒業後はキューバ、インド、エジプト、スーダンに戦い、ボーア戦争では捕虜になるが脱走。記者を経て、二六歳で政界進出。内務、軍需、陸軍(空軍兼務)、植民、海軍と幾つもの大臣を歴任し、一九四〇年首相。英国の生死を分かつ大国難に際し「私は戦争のことなら何でも知っている自信がある。私の生涯の全てはただこの時、この一大試練のために準備されたものである」

 その自信と決意が祖国を救いました。宰相にしてノルマンデイー上陸作戦参加を望んだとの話も伝わります。チャーチルの政治家としての資質はこのような経歴の中に育まれ、大輪の花を咲かせたものでありましょう。国難はこのような指導者を求めます。我が国にかかる政治家がいて欲しいものです。




『日本の息吹』平成23年11月1日号「愛媛版」より転載

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