未曾有の災害
国家の総動員体制を確立せよ
日本会議愛媛県本部会長
 重 松 惠 三
*敗戦・焦土からの復興を思えば必ずやれるぞ!

 三月十一日の地震は東郷神社で会議中でした。大地の揺れにしばしば会議は中断しました。TVや新聞で政府のこの事態に対する対応を見ていますと国家として何か足りない。これでいいのかとの思いが込み上げあげてきます。国家の総力を結集する体制はあるのか。

 所詮、日本はプレートに囲まれ、火山の上にあります。また台風の通路に当たります。人の生活と自然が緩やかに調和した麗しい国ですが、時々起る地震・津波・噴火それに大雨台風には難儀なことです。度々の苦難の中でより細やかな人のつながりが生まれ、復旧・再興にかける意欲が勇気と向上の志をもたらし類まれな国柄を誇っています。国民への天皇陛下のお言葉には深い感動を覚えました。

 このたびのTVの画面を見て思い出すのは、米軍の空襲を受け市街地の八〇%を消失し、焼野が原になった昭和二〇年八月の郷里今治の光景でした。終戦時、日本は焦土でした。そこから国民は総力を尽くし、苦難に立ち向かい復興を果たし、繁栄を得ました。敗戦そして荒廃した国土。国民は心を一にして励みました。誰もそうは言いませんが、国家の総力を挙げる。国家総動員だったのです。

 戒厳令はなくても、緊急勅令はなくても、国家総動員法がなくても、堪え難きを堪え忍びがたきを忍び、何時かこの国が再び興ることに夢を賭け八千万人が臥薪嘗胆,孜孜として励みました。政治さえしっかりしていれば国民はやるんです。今はどうでしょう?

*政治主導の実を示せ!
国家の総力を結集し向かうところを示すのは政治の務め


 東北関東大震災の対応に一番必要なことはしっかりした政治です。国内の力を結集することも出来ず、責任を他に転嫁するリーダーたちに問いたい。雪降る中、食料もままならない状況で被災者の救出に当たり、放射線の恐怖の中で放水作業を続ける自らも被災者の自衛隊員、消防の身になってみたことがあるのか。その施策を見れば、避難所で食を欠き寒さに震える人々の苦労と苦難を我がこととして思いやったとはとても信じられません。

 政府には一般の法令のほか緊急事態対応の各種の法に基ずく権限がある。その権限を行使してどうして油が、食料が必要なところに行かないのか。重機・タンクローリーや船が集まらないのか。他の企業の原子力技術者も一週間たたなければ動員されない。したり顔して解説する学者の先生方も方策があれば出せばいい。政治が成り行き任せで、主導性を発揮しないからこうなります。各省連絡会議も十日以上経ってやっと開く。これが政治主導か。これでは国民はこのような激甚大災害は勿論、安全保障上の重大事案にわが国の危機対応は大丈夫なのか。仕分けと称して国の危機対応能力を落とした政治の責任は大きい。

 今の政治家はどんな姿勢で国難に向かうのか。明治の昔、伊藤博文は、いざ戦となれば老骨をもって弾運びをやると言いました。地方議員の中には予備自衛官が居ますが、国会議員にはどうでしょう。子息が自衛隊員も,かつて一人いましたが今は聞きません。自らが立つ気概を持って、危機の最前線にあってこそ、政治主導が可能です。今、政治家の見識と決断、リーダーシップこそこの重大事に発揮されなければなりません。


『日本の息吹』平成23年5月1日号「愛媛版」より転載

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