憂うべし嘆くべし、日本人の劣化と堕落
日本会議愛媛県本部会長
 重 松 惠 三
 今、日米関係に大きい影を投げかけている二つの問題があります。一つは沖縄の普天間基地に関するギクシャクです。「普天」とは天下のことです。天下の大問題を、約束を反古にしてゼロから出直す。我が国防衛の柱の一つであり、総ての日米関係の基盤である日米同盟が揺らいでいます。鳩山首相は「トラスト ミー」とオバマ大統領に言いましたが、日本のリーダーの誠実と信頼が問われています。いまひとつはトヨタの問題です。

 この二つは繋がるところがあるのかも知れません。外国との関係は複雑怪奇です。思い出すのはデミング氏です。品質管理の泰斗で、戦後のわが国の工業の発展に多大の貢献がありました。彼の理論はアメリカではなかなか用いられず、経営者に意欲があり労働者が等質で高い水準にある日本で始めて実証されました。

 米国の労働者が、作った部品で、出来上がった自動車もありましょうが、日本の大企業の名前を冠した製品がどうしてこんなことになるのか。日本人やその組織の劣化の兆でなければいいのですが。

 近頃の新聞を賑わすものの多くに日本人の美点が失われた現在を痛感します。残虐な殺人事件、親子の間でも珍しくない。定職のない若者、路上生活者。政治と金、恥じることなき責任回避、加えて国民愚弄のばら撒きなど、日本の国柄や国民性を歪める政策の数々に憂慮のため息が出ます。日本の将来は暗いと思う若者は六割以上です。

 日本人劣化の元を辿れば、戦後の占領政策に尽きます。中でも自らを守ることを放棄して自尊自立の気概を失い、組合活動は、仕事を通じて己自身と技術を磨く職人の誇りよりも闘争重視で日本人の勤労を尊ぶ心を損ないました。学校の先生は昭和二十七年、教員の倫理綱領どうり、マルクスレーニン主義による科学により、彼らの政治を実現するため聖職者としての矜持を捨て労働者として団結し現在の教育と政治の惨状を齎しました。

 元来、日本人の心性は「赤き、清き、直き」(明き、正しきも加えた)心であり、これが誠実、勤勉、道義、礼節、操守、謙虚、秩序、仁慈、清潔など日本人と日本人社会の美風を作っていました。高校無償化や子供手当てで、生活の手立ては自らの汗でなく誰かが何とかしてくれる。

 不具合、不満は全て他の責任。依存心は益々肥大し、子供の学力低下が進み、親が自らの犠牲を厭はず情愛を注いで子供を育てる、暖かい家族・家庭の基礎が損なわれる。国民の劣化・堕落は進みましょう。農業は個別補償で篤農家はいなくなるかも知れません。夫婦別姓、外国人参政権の問題も日本の国柄を貶めましょう。

 日本の荒廃は政治に始まり、国民の心に及んでおります。日本人の魂の復活を急がなければなりません。        

『日本の息吹』平成22年5月1日号「愛媛版」より転載

前号



h22. 5.1