危機迫る「誰が日本を救うのか」
 明治の大国難、日露戦争を勝利に導いた日本海海戦の連合艦隊首席参謀、秋山真之は、兄好古と共に伊予者の誇りです。
その真之が、今わの際に遺した言葉があります。

「我が国の前途は実に深く憂うべき状態にある。全ての点に行き詰まりを生じ、恐るべき国難に遭遇しなければならないであろう。俺はもう死ぬが、この後、誰が俺に代わって今後の日本を救うのか」此れです。

 大正7年(1918年)2月4日、49才十11ケ月の生涯を閉じました。この年は、1914年に始まった第一次大戦は全世界を巻き込んで熾烈に戦われ、11月やっと戦火は収まりましたが、前年のニコライ二世退位、10月革命に続き、年を次いで欧州各地での共産党の結成、騒動、革命、国家の独立あるいは共和国宣言が続き、ドイツ皇帝ウィルヘルム二世のオランダ亡命など、騒然とした状況が世界を覆っていました。国内でも米価大暴騰、米騒動、炭鉱暴動、シベリア出兵、寺内内閣倒壊など、内外共に極めて他事多端、憂慮尽きない事態に国民の焦燥も募ります。現在に似た状況と言えなくもありません。

 今、日本に襲い掛かろうとする危機は多岐に亙りますが、極めて重大なものが三つあります。一つは、北朝鮮、中国の核・ミサイルを含む軍事的脅威、二つは目は米・中密着が齎す日米同盟の形骸化、最後は保守崩壊の危機です。

 「保守」とは政党や政治家の色分けの言葉ではありません。日本の歴史、伝統、文化、日本人の心性、日本の国柄に軸足を置き、そこからわが国の将来を展望し、国民の安全と繁栄を求める姿勢であり、心象です。日本を忘れて日本はありません。日本人の依って立つところ亡くして日本人はありません。

 真之の憂慮も此れに似たものでありましょう。「誰が日本を救うのか」それは日本人自身がやらなくて誰がやるのか。日本会議・愛媛はその先頭に立つものでありたいものです。
『日本の息吹』平成21年9月1日号「愛媛版」より転載


新しき教科書の採択!瀬戸内にフィヒテあり、
今治市民・上島町民の見識と勇断を讃える
 総選挙の候補者の車が、雑音と粉(まが)う大音量を撒き散らして走る。マニフェストを読んでも話を聞いても、今日のパンと安逸な暮らしの叩き売りの口上が並ぶ。暑い夏が一層暑く、将来への虚ろな展望しか望めない政策の貧困にやりきれない喘ぎ。そんな時、一陣の爽やかな風が瀬戸内に起こりました。

 八月二十七日、今治市教育委員会において、中学校歴史、公民教科書に、扶桑社版が採択され、ついで上島町でも同様の決定がなされました。待たれた快挙でした。

 教科書の採択といえば、偏った歴史観を持つ人によって書かれたものが多く、それが必ずしもわが国の将来を担う次の世代を教え育てるに相応しいものであるのか。心ある多くの国民が懸念を深くするところでした。そのような心配をよそに、自らの国を悪しざまに言い募り、また当然国民の知識教養として欠かせないわが国の辿り来たった歴史を故意に歪め、あるいは、無視する教科書を推奨する人たちは、韓国、中国などの人と共に、執拗な反対運動を展開します。それら集団がする採択に関わる人への脅迫にも似た妨害行動は、冷静な判断や整斉たる手続きを阻害するところ大なるものがありました。特定の政治思想や信条を教室に持ち込むのは誰か。日教組及びその流れを汲む人々は今のわが国の教育をマッカーサーの占領当時のままに歪め、蝕んでいます。民主党の教育政策に、日教組の主張との多くの類似点を見ます。憂慮に堪えないところです。

 教育は今に生きる者が、後世に対し、子々孫々に対し果たすべき重大な責任です。ここに「フィヒテ」の言葉を思い出します。1807〜8年、ナポレオンの占領下のベルリン。その軍靴の響きの中で、ベルリン大学学長「フィヒテ」はドイツ国民に告げます。「敗れた今、教育の問題は最大の関心事であると共に解決を迫られている重要問題である」「我々に残された仕事は教育である。我々自身が真のドイツ国民に値する子孫を作るための捨石になること。彼らを成長させ世に送り出すことが、敗戦後に生きる我々の第一の目的である。教育は祖国愛に基づくドイツ精神によって行われなければならない。」と。私たち日本会議の教育への想いと相通ずるものがあります。

 この度の今治市と上島町の決定は、両教育委員長、委員はもとより、市長、町長はじめ住民が、高い見識を持ち、勇断を支え、後世への責任を果たされた。洵に馨(かぐわ)しき志であり教育への情熱であります。今治は自らの生命の危険を顧みず匪賊から人質を救った、「日本人ここにあり」の義人、村上久米太郎、責任感の鑑、菅源三郎船長を生んだ土地であり、上島では世界陸上の「男子槍投げ」のメダリスト村上幸史選手が育ちました。
 自治体としての新教科書採択は西日本では初めてのことと聞きます。日本人の魂がここに蘇(よみがえ)り、世界に逞しく生きる日本人が育つことが期待されます。今治・上島に続く自治体が澎湃として興ることに日本の将来が懸かっています。
『日本の息吹』平成21年10月1日号「愛媛版」より転載

 日本会議の月刊誌『日本の息吹』の愛媛県内の読者用に挟み込んでいる、「愛媛版」に掲載している重松会長の巻頭言を今月から本ホームページでも紹介することと致しました。日本会議の会員拡大や学習などにご活用下さい。(愛媛県本部事務局)


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